ダンゴムシと植物の成長 生き物のつながりの授業
また論文を読みました。論文はタダで公開されているものが多いのでありがたいですね。教育系の論文を読もうと考えていますが、何故だか食指が伸びません。科学的なものの方が読み易いです。
さて、今回読んだ論文は、「短報 ダンゴムシの摂食活動が植物生産に与える正の効果」(松良 俊明 2008)です。
端的に述べると「ダンゴムシの糞は無機物に分解され易いので、植物の成長に良い影響がある」ということでした。
実験の方法も簡単でわかり易いので、小学校高学年から中学校での「生き物同士のつながり」という概念を実感し確認するための観察実験として授業で取り入れることを提案しておりました。
では実験方法を紹介していきます。
①容器によく水で洗った石灰砂を入れ、ダンゴムシを入れて2日間絶食させる。(胃内容物を排出させるため)
②3つのグループ(❶ダンゴムシ20匹とケヤキの枯葉1枚(ダンゴムシ区)、❷ケヤキの枯葉1枚(枯葉区)❸どちらも入れない(対照区))をそれぞれ5個ずつ用意する。なお、ケヤキの枯葉はよく洗い、2日間水につけておく。
③2週間後、ダンゴムシを容器から出し、残った容器全てに水150mlを注入し、ウキクサの葉状体1枚を入れる。
④窓辺におき、日照条件の差を少なくするために2〜3日に1回、容器の配置をランダムで移動する。
結果
❶ダンゴムシ区の容器では容器一面にウキクサが繁茂するものがあった。
❷枯葉区では初めはダンゴムシ区と同じように増えたが、次第に貧弱になり、分裂速度も低下した。
❸対照区ではウキクサの色が次第に退色し、分化したとしてもごく小さな葉が分裂しただけで、そのうち枯死したものが多かった。
Hassallら(1987)は、
“ダンゴムシやワラジムシなどの各種の陸生等脚類から排出された糞に存在しているバクテリアの量は、新しい枯葉のそれより124倍多く、また腐食した枯葉より34倍多く、菌類の密度も糞では3倍以上高かった“と報告しているらしい。
つまりダンゴムシが食べて排泄することで微生物の作用がより強くなり、無機物に分解されるのが速くなったと考えられるわけですね。
以前特別支援学級で畑をしていたら、大量のダンゴムシがキュウリの苗を齧っており苦労しました。枯葉だけでなく、生の葉も食べることがあるので農業では害虫扱いです。しかし、一方で有機物の分解を早めて植物の成長に良い影響があるので、齧られても苗がだめにならないくらいある程度大きく苗を育ててから畑に植えるなどして、ダンゴムシと共生していけたら良いですね。