虐待と脳科学についての論文を読みました。
参考:不適切な生育環境に関する脳科学研究(友田 明美 2019)
不適切な養育(チャイルド・マルトリートメント)は、(中略)加害者の意図に関係なく、子供にとって有害かどうかで判断される。
一般的に認識されているような身体的虐待、精神的虐待、性的虐待、ネグレクトなどのほかにも、感情に任せて態度を変えたり、無視したり、子供にスマートフォンをあてがったり、親が授乳中にSNSや動画を見たりするなどもマルトリートメントに当てはまる。
Twitterで称賛されていた「スマホホルダーを使った授乳」なんかもマルトリートメントにあてはまるだろうと思いました。また、子供にスマホをあてがう育児なんかはいまや珍しくもないですよね。これらも不適切な養育であると。。
そういった親が悪いというよりも、現代の社会の労働体系が、養育者の余裕を削ってしまっているのが一番の問題だろうと思います。低賃金労働で共働きにならざるを得ない家庭が多いのだろうと推測します。女性の社会進出は選択肢が増えるので良いことなのでしょうが、育休やら産休などの制度も普及しないといけませんね。また、主夫という概念も広がって、共働きが減ると子供の愛着形成が阻害されることも少なくなるのかなと思いました。
マルトリートメントは無自覚な加害とも言えますね。児童相談所に子供を拉致されたとツイートしている人はこういう可能性も少なからずありそうですね。児童相談所の不正はひとまず置いておいて(よく知らないので)。
愛着障害は基本的に安全が脅かされる体験があっても愛着対象を得られない状態が継続することにより、養育者との愛着関係(絆)がうまく形成されないことによる障害である。
子どもの基本的な情緒的欲求や身体的欲求の持続的無視、養育者が繰り返し変わることにより安定した愛着形成が阻害されることが原因
愛着障害は「反応性愛着障害」と「脱抑制型対人交流障害」に分類されている。
反応性愛着障害は、(中略)自分の世話をしてくれる人に対して強い警戒心を抱き、甘えたくても素直に表現できない。また、やさしく接してくれる相手に腹を立てたり、怒って泣いたりするなど、矛盾した態度を見せることもある。
つまるところ人間不信のような状態ですね。もちろんそれだけではないでしょうが。
脱抑制型対人交流障害は、(中略)誰かれかまわずに愛着を求め、愛情を振りまくため、一見社交的に思われるが、他人に対して無警戒で、相手をよく吟味しない傾向がある。
こっちのタイプは知りませんでした。こういうキャラクターが出てくるドラマか漫画かありましたよね。
つまり、幼少期に安全が脅かされた状態が続くと、人間不信になるか、だれかれ構わず助け(愛情)を求めてしまうような人間になるということでしょうか。どちらも防衛としては理屈が通りますね。納得です。
〇虐待を受けた時期の脳活動への影響
1~2歳に虐待/ネグレクトを受けたことが反応性愛着障害児の腹側線条体の活動低下に最も強い影響を及ぼすらしい。腹側線条体は、報酬の感受性に関わる部分。
反応性愛着障害児童は、大きい報酬であっても、小さい報酬であっても反応しないらしい。つまりモチベーションの維持が困難ということ。
〇あと気になる表現がありました。
子供の脳は発達途上であり、可塑性という柔らかさを持っている。
これはつまり虐待等による脳の損傷を治療するのは、子供のうちでないと困難であるということ?
専門家によるトラウマ治療やら、愛着の再形成を慎重に時間をかけて行っていく必要がある。
これは若いうちの方が、成功しやすいということ?
子供時代に虐待を受けた被害者が、親になると子どもに虐待を行う傾向が指摘されている。自分の子どもに対して虐待する者がおよそ3分の1、普段問題はないがいざ精神的ストレスが高まった場合に自らの子ども時代と同様に、今度はわが子に対して虐待する者が3分の1いると見積もられている。
疲れたのでここまで。。。
気になったらCiNiiで探してみてくださいね。
ではまた。。